発達障害の特性がありそうな後輩OTの指導に、毎日ヘトヘトになっていませんか?
「何度注意しても同じミスを繰り返す」「指示待ちで動けない」「時間の管理ができない」など、医療現場ならではのマルチタスクやコミュニケーションの難しさに、指導方法を見失ってしまうこともありますよね。
しかし、OTはもともと「その人に合った環境や作業を見つけるプロ」です。
本記事では、指導者が疲弊せずに後輩の能力を引き出すための「指示の見える化」や「具体的な環境調整のコツ」を5つ解説します。この記事を読めば、明日からの指導が少しラクになり、チーム全体の業務効率もアップしますよ。

発達特性のある後輩指導は本当に大変…。こちらも神経がすり減らされます。指導者側のメンタルを守ることについても触れていますので、読みやすいところからぜひどうぞ。
なぜ「扱いにくい」と感じるのか?発達特性と行動の因果関係
後輩OTに対して「指示を聞かない」「態度が生意気」「やる気がない」と感じてしまうことはありませんか?
しかし、その「扱いにくさ」の背景には、本人の努力不足ではなく、発達障害(ASD・ADHDなど)特有の「脳の認知の特性」が隠れています。
ここでは、現場でよくある「扱いにくさ」と「発達特性」の因果関係を解き明かしていきます。
① 「何度言っても覚えられない、忘れる」
一見覚える気がないようにも感じられますが、彼らはマルチタスクや記銘・想起が苦手な一面があります。口頭で複数の指示をされると、最初の1つを処理している間に、残りの指示が脳から消去されてしまうためなおさら。
さらに、機転を利かせるのも苦手で「メモを取る」という行為自体を忘れてしまう特性もあります。通常であれば仕事が苦手でも、後輩OTの中には「メモを取って頑張っている姿を先輩に見せたい!」と誠意を見せようとする子もいるはずです。ですが特にASD(自閉スペクトラム症)のある方だと、そのような演出的な言動は難しいんです。よく言えば裏表がないんですよね。
② 「アドバイスをすると、言い訳や反論をしてくる」
これはこちらの指導意欲もかなり阻害されますよね。
発達障害のある方は多角的思考や客観的思考が苦手で、考え方が極端だったりします。中には過度に被害的な子もいるでしょう。
そうすると「ここはもっとこうした方がいいよ」という部分的なアドバイスを、「自分という存在すべてを否定された(0点にされた)」と極端に解釈します。自分を守るために、パニック状態で必死に言い訳(防衛反応)をしてしまうのです。
目に見える言動は「素直さがない」「プライドが高い」ようにも感じますが、そうゆう一面がある子ほど傷つきやすく(自分の受け取り方の問題だとは気が付きにくい)、繊細で、そんな自分を守ろうと強い反論が出てくるのだと捉えてください。
③ 「患者様やスタッフの空気を読まない発言をする」
発達特性のある子は、言葉の裏にある「ニュアンス」や、その場の「暗黙の了解」など曖昧さを察することが苦手。また、思ったことをすぐに言う、喋り始めると止まらず一方的に自分の好きなことの話ばかり続けているなどの場面も見受けられるかもしれません。
評価用紙に書かれた通りにストレートすぎる質問をしてしまったり、先輩が忙しそうにしている文脈を読めずに自分の質問をねじ込んだりする場合もあるでしょうか。
本当は患者さんの話に耳を傾けなくてはいけない私たちですが、それが難しい後輩を見ていると「デリカシーがない」「協調性がない」と感じる先輩OTもいるかもしれません。
④ 「スケジュール通りに動けず、いつも時間を守れない」
「あと10分で何ができるか」という時間の逆算(タイムマネジメント)が脳の仕組みとして苦手です。また、カルテなどの文章表現など、自分が気になった1点に過剰に集中(過集中)してしまい、気づいたら次の介入時間を過ぎていた、という現象が起こります。
一見「時間管理がずさん」「だらしない」と感じるかもしれませんが(本当にそうゆう方もいますが…。)、我々が自然にできることが彼らには難題である可能性が大きいのです。
扱いにくさを軽減するアプローチ例
私たち作業療法士は、患者様の「できない」を環境調整で「できる」に変える専門家。そのスキルを後輩指導にも応用してみましょう!

はじめに言っておきます…「めんどくさ!」と読むうちに感じると思います。そうなんです、一人の患者さんを持つくらいの気持ちで関わらないと大変なんです、トホホ…。
① 弱点を埋めるより「強み」を尖らせる
発達に凸凹があるからこそ、苦手なことが多い反面、特定の分野で爆発的な力を発揮することがあります。
例)興味のある疾患の文献をまとめさせたり、勉強会の資料作りを任せたりする。
例)マニュアル通りにきっちり行う作業が得意な場合は、物品管理やデータ入力を担当させる。
一つでもいいから得意分野があると自信が生まれ、指導者との信頼関係も築きやすくなります。
関係性が築けると、「この人の言うことなら聞いてみようかな」「相談してみようかな」と言う気持ちを引き出せるはずです。
② 口頭指示を減らし「見える化」する
指示はなるべく「耳」からではなく「目」から入れます。
例)毎日のルーティン、評価の段取り、カルテ記載の必須項目をチェックリスト化します。
「次は何をすればいいか」が視覚的にわかり、指示待ちや確認漏れが激減します。
③ 口頭指示を出す際は端的に曖昧な表現を避けて
発達特性があっても理解力は様々。後輩を評価しながら伝わりやすい言い方を探るのが一番ですが、おおむね長い話や曖昧な表現はNGです。
例)×「カルテは早めに書いてね」 ⇒ 〇「カルテは13時までに登録してね」
例)×「患者様に優しく接して」 ⇒ 〇「患者様の話を遮らず、まずは3分間傾聴してね」
ついつい説明に熱が入ってしまいますが、長い話は逆効果!短く簡潔に伝えてあげましょう。曖昧な言葉を避け、誰が見ても同じ解釈ができる言葉を使います。
指導者のメンタルを守る:「性格」ではなく「システム」として捉える
特性のある後輩を指導する最大のコツは、自分のエネルギーを使い果たさないことです。こちらの感情が揺れれば揺れるほどエネルギーを消耗し、余裕を持って接してあげることができなくなります。
彼らの行動を「性格が悪い」「私の言うことに耳を貸さない」などと人格や人間関係の問題にしてしまうと、指導者側がメンタルを病んでしまいます。
「この脳のシステム(特性)に対して、どういう入力(指示)を与えれば、正しい出力(行動)が返ってくるか」という、システム的アプローチを持つことで、お互いに一歩引いた健康的な距離感を保つことができます。
そして、私の経験からお伝えすると、苦手分野に長居きる人はいないです。我々もそうですが、苦手なことを毎日させられることほど苦痛なことはなく、そのうち退職をしたり精神的不調になって休職をしたりするケースがほとんどです。
なので、後輩OTが「向いてないな」と感じれるタイミングが来れば自分で職場を離れるという選択肢をとるタイミングが必ず来ます。先輩OTは別にその子を完璧な一人前OTにしようとしなくたっていい。仕事が合わないと気づくのをそっと待つだけでいいのです。

そして一番大切なのは、一人で対応しないこと!共感者をつくること!です。一人で抱えないこと。
まとめ:普通を求めず、OTの視点で「合理的配慮」を
後輩を「一人前のOT」に育てようとする必要はありません。
もしかするとその後輩にはOTという仕事そのものが合っていなかったのかもしれない…後輩がそれに気づいて自分の輝ける分野に移り行くまで、患者さんの安全性を守りながら接していきましょう。
その子に対する期待をやめ、お互いが潰れてしまわない距離感と仕組みづくりを、今日から一つずつ試してみてくださいね。


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