【リハ拒否】動きたくない患者さんの心を探る、精神科OT直伝の声かけとアプローチ

患者様への対応術

「リハの時間ですよ」と声をかけたら「今日は行きたくない」「やっても意味がない」と布団を被られてしまった…。

私たちリハ職が毎日のように直面する「リハ拒否」の壁。

「廃用を進めたくない」「早く離床させなきゃ」と焦るあまり、ついつい正論で説得しようとして、患者さんとの関係がギクシャクしてしまった経験はありませんか?

身体の訓練をスムーズに進めるためには、まず「心の準備状態」を整えることが欠かせません。

今回は、精神科OTの視点から、リハビリをしたくないと訴える患者さんとの接し方のポイントをお伝えしていきます。

セラピストの「正論」が患者さんの心を閉ざす理由

「リハビリに行きたくない」「やっても意味がない」という強い拒否に直面したとき、私たちはつい「モチベーションが低い」「サボろうとしている」と捉えてしまいがちです。

しかし、心理学の視点から見ると、これは患者さん自身が自分の心を守ろうとしている状態「抵抗」であることが考えられます。

抵抗の理由は、患者さん本人から話を引き出してみないと分かりませんが、例を考えてみましょう。

突然の病気や大怪我によって、昨日までできていたことができなくなる――。これは患者さんにとって、受け入れがたいほどの激しいトラウマです。この恐怖や不安から自分の心を守るために、脳は無意識に以下のような防衛機制を働かせているのではないでしょうか。

  • 「否認(ひにん)」:障害を負った現実を認めないことで、傷つくのを避ける(「リハビリなんか必要ない」「明日には治る」)。
  • 「退行(たいこう)」:依存的で幼児のような状態になり、責任やリハビリのプレッシャーから逃れようとする。
  • 「合理化(ごうりか)」:もっともらしい理由をつけて行動を正当化する(「今日は天気が悪くて古傷が痛むから休む」)。

もしかすると、患者さんが見せる「抵抗」は、怠けではなく「これ以上リハビリ室に行って、できない自分を突きつけられたら、心が壊れてしまう」というSOSなのかもしれません。

そんな心の状態の患者さんに、ド正論を突きつけるとどうでしょう…。

心はさらに傷つき、ますます防衛も強くなっていきそうではありませんか?

抵抗が見受けられる時は、身体機能の評価を一度おき、「なぜ嫌なのか」の評価に切り替えるタイミングです。

精神科OTも実践!心を評価するポイントと声かけ例

これまでの「変化のプロセス」から防衛の時期を読む

患者さんが今、病気や障害を受け入れるプロセスの「どの段階」にいるのかを振り返ります。

raco.
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障害受容が進む過程には一定の順序があります。
リハの業界では「上田敏の5段階モデル」が有名です。

ショック期障害を負った直後で、何が起きたか実感が持てず心が麻痺している状態。
②否認期「治るかもしれない」「何かの間違いだ」と事実を否定し、過度な期待を抱くことで自分を守ろうとする状態。
③混乱期障害が治らないことを実感し、「なぜ自分が」という怒り、絶望、自暴自棄などネガティブな感情が湧き上がる状態。
④解決への努力期現実を受け入れ始め、リハビリや治療、生活の工夫などに前向きに取り組み始める状態。
⑤受容期障害を自分の一部として認め、新たな目標や価値観を見出し、あるがままで生きようとする状態

例えば、発症からまだ間もなければ「否認」で心を守るしかない時期かもしれませんし、現実を受け入れようとリハを頑張ってみたけど「思ったより良くならない」という現実に直面し混乱期を行き来している状態かもしれません。

これが評価できると「否認をさせておくべき」なのか「受容に向けて一緒に頑張る時期なのか」考える一つの目安になります。

患者さんによって受容の進み具合は様々です。個別性を得意とするOTがここを評価できると最高ですね。

「どんな瞬間に一番強い抵抗が出るか」を見極める

「リハビリのすべて」を拒否しているのか、それとも「特定の何か」に防衛反応が出ているのか、抵抗のトリガーを探ります。

例えば…

  • ベッドから起きることは拒否しないが、「リハビリ室に行こう」と言うと拒否が強まる
  • 雑談には応じるが、麻痺側の足に触れようとすると怒り出す。
  • OT/PTには拒否が出るけど、STには出ない。

ピンポイントで拒否が出る瞬間を見つけることで、患者さんが何を一番恐れているのかが見えてきますし、それを取り除いてあげると抵抗も弱まるかもしれません。

ベッドサイドの「他愛ない会話」から心の状態を覗く

トリガーが予測できたら、それをなるべく排除した中で、患者さんの本音に耳を傾けるところから始めます。

会話が続かない場合は、嫌がられない限り隣で過ごしているだけでも良いかもしれません(算定につながるかは上司と要相談ですが…)。

この忍耐ができるか否かで患者さんとの関係性が変わる可能性が大きいです。

「拒否 ≠ 近くにいて欲しくない」です。本当は不安でいっぱいで、誰かに頼りたくて仕方ない患者さんもいるかもしれません。それが言えないだけで。

だからこそ、患者さんからのアクションが出るのを我々はじっと待ちます。何か出てきたらそれを否定せず、じっくり話を聞いてあげてくださいね。その繰り返しです。

まとめ 〜リハ拒否の扱い方で信頼関係が変わる〜

リハ拒否は、患者さんが我々に「今は辛いんだ」とSOSを伝えようとしている状態。

そんな兆候がみられるときは焦らず一歩引くことで、結果的に「この先生のリハビリならやってもいいかな」と思ってもらえる近道になります。

もちろん廃用を予防したり、回復を急ぐ上では早期の離床は必要不可欠ですので、余裕があれば実践してみてくださいね。

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