「解雇したいほど扱いにくい部下なのに、クビにできない……」
管理職としてチームを守り、成果を出さなければいけない立場だからこそ、周囲に迷惑をかける後輩を解雇できない現状は理不尽で精神的にもすり減る毎日だと思います。
結論からお伝えしますと、問題がある後輩であっても管理職の一存や多少の素行不良・能力不足を理由に「即解雇」は難しいのです。
しかし、これは管理職であるあなたが、その理不尽な状況をすべて一人で耐え忍ばなければいけないという意味ではありません。
今回は、なぜ解雇が難しいのかという「法律の壁」を整理し、産業保健領域に携わるOT目線で管理者に実践して欲しい自分のメンタルを守る対策を解説していきます。
なぜ問題ある部下なのにクビにできないのか?
日本には「労働契約法」があり、解雇について以下の定めがあります。
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536
つまり、解雇自体は不可能ではありませんが、それに相応しい理由や条件がないのにも関わらず解雇した場合は違法になってしまうということです。
例えば、「指示を聞かない」「態度が悪い」「ミスが多い」という理由だけでは、裁判を起こされた場合に会社側が負けます。裁判で負けると、会社はその不真面目な後輩に対して「働いていなかった期間の給与」を全額遡って支払った上で、職場に復帰させなければならない、というリスクを負うことになります。
そのため、人事や経営陣も慎重にならざるを得ず、現場のあなたに「まあ、なんとかうまく指導してよ」と丸投げする形になってしまうのです。
そうはいっても、
- 客観的に合理的な理由があること(誰が見てもクビにせざるを得ない証拠)
- 社会通念上相当であること(解雇以外の選択肢が本当になかったこと)
とはどんな状態なのか…整理していきたいと思います。
“客観的に合理的な理由があること”とは?
一言でいうと「会社の身内贔屓や感情論ではなく、第三者が見ても『それはクビにされても仕方がない』と納得できる言い逃れのできない事実」のことです。
「これは解雇の理由として妥当だ」と認められるのは、主に以下のようなケースが考えられます。
1. 著しい能力不足・勤務態度の不良
ただ「仕事が遅い」「ミスが多い」だけでは不十分です。
「平均的な社員の何倍もミスを重ね、会社の売上に重大な損害を与え続けている。」「遅刻や無断欠勤を何度も繰り返している。」などのケースが考えられます。
2. 職務怠慢や業務命令違反
会社の大切なルールを無視したり、正当な指示を拒絶し続けたりすることです。
「正当な理由なく、上司の業務指示を拒否し続ける。」「社内の重要な決まりごとを意図的に破る。」などのケースが考えられます。
3. 著しい規律違反・非違行為(犯罪やハラスメント)
会社の信用を失墜させるような重大な問題行動です。
「会社の金を横領した」「重大な経歴詐称をしていた」「他の社員に対して深刻なセクハラを行なった」などのケースが考えられます。
4. 経営上のやむを得ない理由(整理解雇)
会社の経営が厳しくなり、従業員を維持できなくなった、いわゆるリストラの場合です。
これには「本当に倒産しそうか」「役員報酬を削るなど、解雇を避ける努力を尽くしたか」など、厳しい条件を会社側がクリアする必要があります。
“社会通念上相当であること”とは?
会社が後輩を解雇する際、世間から「それならクビも仕方ないね」と認められるには、以下のような配慮を尽くしている必要があります。
1. 段階的な処分を踏んでいるか(一発クビはNG)
どんなに大きなミスや態度不良があっても、いきなり「解雇」にすることは認められません。
例えば…
口頭注意 ⇨ 書面での厳重注意 ⇨ けん責(反省文の提出) ⇨ 減給・出勤停止 ⇨ 最終手段として「解雇」
などの段階が考えられます。
このステップを踏まずに「もう明日から来なくていい」とするのは、社会通念上「重すぎる処分」とみなされます。
2. 会社側が「改善のサポート(回避努力)」をしたか
後輩のパフォーマンスが低い場合、悪いのは本人だけでなく「会社がちゃんと育てたのか?」が問われます。
「一人の指導者だけでなく、他の人が指導してもダメだったか」「業務マニュアルは適切だったか」「別の能力を発揮できる他部署への異動を検討したか」などが問われたりします。
これらのクビを避けるための努力を会社がやり尽くして、初めて「これ以上は雇えない」と言えるのです。
3. 他の社員の処分と「公平」であるか
その人のことが「嫌いだから」「目障りだから」という理由で、ターゲットを絞って厳しく処罰していないかという点です。
過去に同じようなミスや態度をとった他の社員がクビになっていないのに、その後輩だけをクビにするのは、不公平であり社会通念上「不相当」と判断されます。
まとめ:管理職のメンタルを守るために
解雇には長い道のりとそれを乗り越える相当なエネルギーが必要となります。
管理職の方の中には「結局いつまでも、その子に付き合って指導し続けなきゃいけないの?」と絶望してしまう方もいるでしょう。
しかし、そもそもこの問題は管理職が個人で背負える限界を完全に超えています。
あなたがやるべきことは、その部下が更生できるよう手を貸すよりも、『何度も注意したけれどダメだった』などの客観的な事実を淡々と記録し、人事や産業保健スタッフを早期に巻き込むことで、ご自身のメンタルヘルスを守ることが最優先です。
一人でなんとかしようと思わず、色々な人の力を借りながら取り組んでみてくださいね。


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